伊達だより

田舎暮らしの日常と花とニャンコ時々小説

ジャコシカ121

 一旦岩山の陰に隠れた人影が再び現れた時、高志はその服装から、やっと女だと気が付いた。

 フード付きの淡い狐色の七分コートの襟には、同じ色のボアが付いている。

 黒のブーッには雪がまとわり付いている。

 フードを被っているので顔は良く見えないが、時折のぞく白い面立が、強く高志の眼を射た。

 二人は小屋の前でその姿が、近付くのを待った。

 若い女だ。

 高志は思わず何だか笑い出したくなった。

 あり得ないことが起きている気がしたのだ。


 近付く姿はしなやかに、弾むように揺れている。やがて二人の前に立った彼女は、両手を上げて
 
さっとフードをはずした。

 瞬間、漆黒の髪が両の肩に溢れ出た
 
 彼女はうるさそうに首を振り、両手でその流れる髪を後ろに弾いた。

 少こし吊り上がった、一重で鳶色(とびいろ)のきつい眼が、挑むように二人を見ている。

 尖った顎と通った鼻筋、その二つに抗うように引き結んだ厚めの唇が、高志をたじろがせた。

 どこかちぐはぐで、見る人を不安にさせる面立だ。

 高志は心の隅で、これはやはりあり得ないことだと思った。

 沈黙がそんな気持ちを一層強めた。

 三人は暫くはただ互いを見つめ合っていた。

 いや、そうではない。女は鉄五郎だけを見ていた。

 高志がその沈黙に耐え切れなくなった時、鉄さんが呻くように言った。